2016年2月28日日曜日

こだわり


シャンバラプチホテルでは
朝食サービスのときに
ご希望があれば
卵料理をお出ししています。


その卵料理というのは
これでもかというぐらいカリカリに焼いて
水分を飛ばした
スクランブルエッグです。







すでに何度かお話ししていると思いますが
メキシコ人は卵が香るのが大嫌い。

なので
トマトや玉ねぎ、ソースなどをフライパンに入れてよく炒め
そのあとで解きほぐした卵を入れて
汁気がなくなるまで
よーーーーーーーく焼きます。


そのあと、
マッシュポテトを作る料理道具、マッシャーを使って
卵を粉々につぶしてそぼろみたいにします。


ふつうはそれで、お皿に盛りつけるのですが
シャンバラプチホテルの場合は
ティンバル(日本でいうセルクル)という
丸い型を使って卵を丸く固めて
デコレーションしてお出しすることになっています。


そのため、ほんの少しでも汁気があると
丸くデコレーションした卵から
汁がにじみ出て、
お皿が汚れてしまうので

卵を漉し器にいれて
ぎゅうぎゅうと絞り
汁気を全部とって、卵をパラパラにします。


そして、このようなおしゃれな盛り付けになるわけなのです。


が・・・・・


私から言わせると
卵のおいしい部分は
その絞り出しちゃってる汁気にあるわけで

盛り付けられているものは
もはや卵というよりは、
卵の残りかす???のように感じるわけです。


だから、かなり味付けを濃いめにしてあり
卵の味がほとんどしません。笑



フムスやディップみたいな感じで
パンにつけて食べれば
スパイシーなお料理だとは思うのですが


スクランブルエッグか?と聞かれると


うーーーーーん。。。。と
答えに詰まってしまいます。笑



自分のホテルで出しているスクランブルエッグに
ケチをつけたくはないのですが(笑)


正直、、、、、
メキシコのスクランブルエッグは
絶対に日本人の口には合わないですし

たぶん、他の国の人からも
そんなに支持はされないと思います。


それが証拠に、
ホテルに来るお客様のほとんどが
2日目には


「ふつうの卵料理はないの?」


と聞いてくるのです。


メキシコ人にとって
これは普通の卵料理で、
トルティーヤに載せて食べると最高!!!らしいですが

欧米人にとって
朝食の卵としてイメージするには
あまりにも不思議な食べ物です。


オーナーからは
「誰が何と言おうと、これがうちの卵料理」
といわれているので


目玉焼きはできないの?
ポーチドエッグは???。。。といわれたときには


「当ホテルでお出しする卵料理はこちらになります。。。」と
言わざるを得ません。


そう説明しても
この卵料理に納得がいかない人が
かなりいらっしゃって(笑)


せめて、ゆでたまごでいいから!
ゆでたまごなら簡単でしょう?
とにかく、この卵料理以外のものを作って!


と懇願されます。笑


私としては、
お客様が喜んでくださるのが一番なので
ゆでたまごでいいから!と言われたときには
オーナーに許可を得て
それをお出しするようにしています。


でも、オーナーは
そういうオーダーを聞くと
ものすごく機嫌が悪くなって


「お前が何でも言うこと聞くような顔しているから
つけこまれるんだ!!」

などなど、
普段は言われないような暴言を吐かれます。


そういう対応をされると
私自身も


「お客様が喜んでくれたら
ホテルにとってもいい話なんだから
ゆでたまごぐらいいいじゃないよ!

なんで、そんな些細なことで
そんなに怒んなきゃいけないのよ!!!!」


とムカつき、


「もう、今度こそ、本当に辞めてやる!!!!」と
思うのです。笑



たかが卵料理のことなのですが
ほぼ、すべてのグループで
この会話が繰り返されるので
私は、正直なところ、ものすごく疲れていました。


(つまり、ほとんどの人から
普通の卵料理が食べたいといわれる)


これだけ、毎回毎回言われているのに
どうして妥協して、普通のジューシーなスクランブルエッグを
作らないんだろう?
どうして、ゆでたまごじゃダメなんだろう?
どうして目玉焼きじゃダメなんだろう?


何度か、質問してきましたが
明確な答えをもらったことはありませんでした。


目玉焼きとかポーチドエッグは
一つ一つ作ると結構時間がかかるので
うちのキッチンの構造上難しいのは確かです。


でも、いわゆる普通のジューシーでふわふわな
スクランブルエッグは簡単に作ることができます。



いろいろアイデアを伝えてみましたが
オーナーは決して首を縦には降らないのです。


そして、なんども言い合いをして
いろいろ自分で考えた結果、

きっと、オーナーは自分が食べておいしくないものは
出したくないんだろうな。。。という結論に至っていました。


つまり、メキシコ人であるオーナーにとって
ジューシーでふわふわなスクランブルエッグは
卵の臭いがひどくて、生っぽい
恐ろしい食べ物でしかないわけです。


そんなものを、
お客様に出すわけにはいかないんだろうな・・・と。



そういうわけで、
私の中では、その結論で落ち着いていました。



そして。。。。



今日になって、
意外な事実が発覚したのでした。



今回も、アメリカから来たヨガのリトリートグループの先生から
2日目に卵料理のクレームが入りました。


いつもだと
「他の卵料理を作ってもらえないか?」という要望なのですが


今回は、よっぽどこの卵料理が変だと思ったらしく


「これはいったい何なのか?卵料理っていうけど
どういう卵を使っているのか?
本物の卵を使っているのか?
それとも粉末になった加工卵を溶かしてつかっているのか?」


といった質問を受けたのです。


オーナーの顔色はみるみるうちに青ざめ
明らかにものすごく怒っているのがわかりました(笑)


それでもオーナーは落ち着いた対応をし、
ちゃんとした卵を使っていること、
これはメキシコの普通のスクランブルエッグであることを
説明しました。


それでもヨガの先生は納得がいかず
明日はどうしても目玉焼きを作ってほしいと言ってきました。


何度かいろいろやり取りがあったのですが
結果的に目玉焼きを作ることになりました。


とはいえ、メキシコ人は
黄身がトロトロの
目玉焼き(いわゆるサニーサイドエッグ)は絶対に食べませんので
目玉焼きの両面焼きを作ることになりました。


ただそれを作ればいいだけなのに
オーナーは
卵料理担当のTに


「明日はトルティーヤを多めに買ってきて
フリホレス(黒インゲン豆のピューレ)も作るように。

トルティーヤを温めて、そのうえにフリホレスを塗り
そのうえに目玉焼きの両面焼き(スペイン語でいうところのHuevos estrellados)を
乗せてアボカドを添えてデコレーションしなさい」


と指示を出しました。


「目玉焼きつくるだけだって
時間かかるのに
なんでトルティーヤにフリホレスまで準備しなくちゃいけないの?

お客様の要望は、目玉焼きなんだから
そんな小細工しないで
普通に目玉焼きを作ればいいじゃない!」


と、自分の意見が出かかったのですが
オーナーの顔がかなり怖かったので
何も言わずに、
指示に従うことにしました。



そして翌日。。。。



かなり時間がかかりましたが
なんとか無事に作って
皆様に喜んでいただくことができました。


が、

オーナーはものすごくご機嫌斜め。


一つ一つ焼いて時間がかかりすぎ
お客様をお待たせしてしまったことが
気に入らなかったのかな。。。と思ったのですが


実はそうではなかったようです。


まるでストレスを発散するかのように
私のことをわけのわからない理由で怒鳴りつけ、
キッチン全体が、氷のように固まった後


いきなり自分の考えを話し出しました。



・・・・・・
・・・・・
・・・
・・



自分が外国に行ったときは
そこで出されたものを食べる。
卵料理がメキシコ風じゃない、
サルサがない、唐辛子がない・・・・などと
文句を言ったりはしない。


なぜならその国を訪れて
その国の文化を楽しんでいるからだ。
その違いを楽しむために
別の国に行くんだ。


それと同じで
メキシコに来たなら
メキシコのものを試すべきだ。

メキシコに来て、欧米風の卵料理を期待するなんて
おかしいだろう?

メキシコに来たからには
メキシコのものを食べて、楽しんでもらいたい。
メキシコを体験してもらいたい。


自分が食べたい卵料理なら
自分の家でいつでも食べられるじゃないか?


なんで家で食べるのと同じものを食べようとするんだ?

ここにきたなら
メキシコならではのものを食べてもらいたい。


他のどこのホテルが
彼らの要望に合わせて
欧米風のスクランブルエッグを作っても
うちではやりたくない。

ここはメキシコで、メキシコのホテルで
メキシコを体験してもらうためのホテルだから。

他のどこのホテルが
欧米スタイルに迎合しても

うちだけは
「ここはメキシコなんだ!
メキシコに来たなら
メキシコスタイルを受け入れて楽しみなさい」

とお客様にいえるホテルでありたいんだ。



・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・



これを聞いて、
なんでわざわざ
目玉焼きにトルティーヤとフリホーレスをつけたのかが
理解できました。


ただの目玉焼きを出したら
欧米風になってしまう!
それでは、オーナーのこだわる
「メキシコ風」ではなくなってしまう。

だから、
ほとんどの人が
トルティーヤやフリホーレスを残すであろうことは
あらかじめ想像できたのに、

メキシコスタイルを貫いたというわけです。



なるほどなるほど。。。。



正直、これが正しいのかどうか
よくわかりません。


でも、自分の軸をブラさないというのは
こういう個性的なホテルを経営するうえでは
とても大切なことじゃないかと思いました。


オーナーがこだわりをもって経営し
そのスタイルを気に入った人たちが
何度もリピートしてくれる。。。


もちろん、気に入らない人は
ものすごく気に入らないでしょうけど
気に入ってくださる方は、とっても気に入ってくださる。


誰に何と言われようと
迎合せずに自分のこだわりは守り抜く。


たかが卵料理でも!(笑)


私は、そういうところ
とっても意志が弱くて
お客様にいわれたら
簡単に、いろいろ変えてしまうタイプ。。。(笑)


そういう弱いところが見えてしまうのか
お客様から
無理難題やイレギュラーなことを頼まれるのは
いつも私。。。笑


そして、
こんなご要望をいただいたんですがと
オーナーに確認するたびに
叱り飛ばされる日々。。。。。笑



たかが卵のことで。。。っという私の甘さが
ホテル全体に迷惑をかけることがないよう
しっかり気を引き締めたいと思います。


お客様に満足していただきつつ
自分たちのこだわりは守る・・・


線引きが難しいところなのですが
でも、
いくらお客様に言われたからと言って
何でもできるわけではないので
オーナーのさじ加減をしっかり見習っていこうと思います。


いや~
毎日いろいろ学びになります!






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