2015年11月21日土曜日

ちょっと真面目にヨガ その2 歴史

ヨーガの起源は定かではありませんが、
紀元前2500年位から栄えたインダス文明においては、
すでに行われていたのではないかと言われています。


ヨーガが記述された最も古い文献は
紀元前800年ごろに成立したといわれる
「タイッティリーヤ・ウパニシャッド」です。
紀元前350~300年ごろに成立したといわれる
「カタ・ウパニシャッド」においては
「感官の確かな制御がヨーガである」としるされています。


また、紀元前200~紀元後200年ごろに著されたとされる
インド叙情詩「マハーバーラタ」の中にもヨーガに関する記述があります。

愛と奉仕によって神との結合を目指す
「バクティ・ヨーガ」や、
日々生活の中で無私の奉仕活動を行うことで解脱を目指す
「カルマ・ヨーガ」は
「マハーバーラタ」に収められている
「バガヴァット・ギーター」を経典とするヨーガです。


また様々な経典を研究し、
知識と智慧を身につけることによって解脱を目指す
「ジュナーナ(ギヤーナ)ヨーガ」も生まれました。


その後、2~6世紀ごろ、
インド六哲学の一つであるサーンキヤ学派の理論を基礎として、
パタンジャリが「ヨーガ・スートラ」をまとめ、
ヨーガ派哲学の開祖となりました。


「ヨーガ・スートラ」において
「ヨーガ八支則(アシュターンガ・ヨーガ)」が著され、
ヨーガは「解脱への実践方法」として明確に体系づけられたのです。


「ヨーガ・スートラ」に著されたヨーガは、
瞑想を中心とした静的かつ精神的側面が強いヨーガであり、
多少のアーサナ(坐法。つまりヨーガのポーズ)は示されているものの、
身体を動かすことが目的ではなく、
あくまでも自らの精神を制御して解脱を目指すことが中心となっています。


「ヨーガ・スートラ」を経典とするヨーガは
「ラージャ・ヨーガ(王道のヨーガ)」と呼ばれます。


その後10~13世紀にかけ、
密教(タントリズム)の影響を受けたヨーガはさらに発展し、
聖者ゴーラクシャ・ナータによって「ハタ・ヨーガ」の経典が著されます。


「ハータ・ヨーガ」は「チカラのヨーガ」といわれ、
「アーサナ(坐法)」や「プラーナヤーマ(呼吸法)」などの
身体技法の実践に重点を置いて解脱を目指すヨーガです。


16世紀に入り、スヴァートマーラーマによって
「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」という経典が著され、
その後「ケーランダ・サンヒター」「シヴァ・サンヒター」が成立し、
この3つが「ハタ・ヨーガ」の三大経典となりました。


この「ハータ・ヨーガ」が、美容・健康によいエクササイズとして
多くの人に実践されている近年のヨーガの原点であり、
スポーツのときに行われるストレッチもなども、
「ハタ・ヨーガ」のアーサナ(坐法・ポーズ)がモデルとなっています。
これ以外にも、クンダリニーの昇華による解脱を目指す「クンダリニー・ヨーガ」、
マントラ(真言)を唱えることで解脱を目指す
「マントラ・ヨーガ」など、様々なものが発展しました。


仏教等のインド発祥の宗教が広がることによって、
ヨーガはその修行方法の一つとして全世界に知られていきますが、
エクササイズ的要素の強いヨーガが発展する中で、
「宗教的」な要素が排除され、人々に受け入れられるようになっていきます。


例えば1940年代にインドのパタビ・ジョイス師が開発した
「アシュターンガ・ヨーガ」は、
「ラージャ・ヨーガ」の八支則をわかりやすくし、
呼吸と共にアーサナを行う「ヴィンヤーサ」というテクニックを重視して
人気を集めました。


ジョイス師の「アシュターンガ・ヨーガ」は、
1960~70年代のヒッピー・ニューエイジブームの中で
アメリカやヨーロッパに伝わっていきます。

そして、このアシュターンガ・ヨーガを元にした
フィットネスタイプの「パワー・ヨーガ」の開発が、
1990年代から始まるヨーガブームに火をつけました。


ハリウッドのセレブリティの間で絶賛されたこともあり、
美と健康を求める人々がこぞってヨーガを始めるようになったのです。


ヨーガ需要の高まりを受け、
その後も様々なヨーガが開発されていきました。


例えば高温多湿の室内で行う「ホット・ヨーガ(ビクラム・ヨーガ)」、
妊婦のためのマタニティ・ヨーガ、
ヨーガを使ったセラピー「ヨーガ療法」等があります。



ヨーガの科学的研究は1920年代からインドでスタートし、
今ではアメリカ、ヨーロッパなどの大学や研究機関にも広がっています。
その結果、ヨーガが患者のQOL向上、
緩和ケア、心のケアなどに効果があるという臨床例が多く報告され、
積極的な臨床試験などが行われるようになってきています。